煙草の思い出

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煙草の思い出

3cb9ca0e-7698-48fa-baa6-c735f788258e 私が子供の頃(昭和30年代)は、「大人はみんな煙草を吸うもの」というくらい喫煙者が多かった。 我が家でも、父や祖父は愛煙家で、小銭を持たされて子供が煙草を買いに行くことも日常茶飯事だった。 祖父には、「しんせい」という煙草を買いに行かされた。 父が吸っていたのか、鳩の絵がついた「ピース」の缶もあった。 家には「煙草盆(たばこぼん)」と称する、黒い木製でレトロな彫刻が施されているトレーがあった。 煙草盆には、盆とお揃いの木製の灰皿(内側は金属)が載っていて、煙草やマッチを置くスペースがあり、「煙草セット」とでも言うべきものだった。 父は子供を喜ばせるため、煙を口いっぱいに溜めてから口をすぼめて、頬っぺたを指でぽんぽんと突いて、ドーナッツ型の煙をつなげて出した。 私たちはそれを指で追ってはしゃいだ。 煙たかったとは思うが、楽しさの方が大きかった。 小学1年生くらいの時の思い出がある。 大人たちがこたつで談笑していて、少し離れたところに「煙草盆」があり、吸いさしの火のついた煙草が置いてあった。 吸っていた人がトイレにでも立ったのだろう。 私は大人たちを笑わせようと、その煙草をくわえて煙を口いっぱいに溜めて、手振りで「見て!見てー!」と合図。 大人たちがこちらを見た瞬間に、煙をぷぅっと吐き出して見せた。 大笑いすると思ったら、大人たちが血相変えて駆けつけ、「何やってんだ!」と大目玉を食らった。 口の中の煙の苦さと共に覚えている。
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