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──時は少し戻ってまだ林鉄線内を走っていた頃。
ロコは水筒に詰めてきた冷水──元々はみんなの水分補給用にとクト駅の冷蔵庫で冷やしていた水──をオスタップ(洗面器)にあけ、タオルを浸し、高熱に魘されるニーナちゃんの額に乗せる。苦しそうな彼女の表情がほんの僅かながら弛む。
ロコは続けて取り替え用のタオルをもう一枚取り出し、洗面器に浸す。
その手元の水面は全く揺れ動かず、一滴の水もこぼれていなかった。
ここは80km/hで爆走中の客車の中。そんな事を忘れるぐらいの静けさである。
スロが左手を天井について体を支え右手一本で運転しながら、それでも何度も頭をぶつけていたのと対称的に……というか、そのお陰なのだが。
(お願いニニ、起きて……)
ニーナちゃんが少しでも楽に感じられるよう、タオルが少しでも温もったら取り替えることを繰り返しながら、念話でニニに呼びかけ続けるロコ。
しかし、ロコは魔法力それ自体こそはスロに勝るとも劣らないものの、元来念話が下手なのである。
クト駅に来た頃など、スロだけに飛ばすつもりが全員に飛ばしてしまったこともザラにあったし、今はかなり成長したとはいえ……。
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