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スロの脳裏にはいくつかの選択肢が浮かんでいた。
ひとつ目は、とにかく信号所に停車してニニを呼ぶ方法。
だが、信号所からニニの家までは歩いて10~12分、駆け足でも7~8分掛かってしまう。ニーナちゃんの病気が魔法療法と相性が良いものであれば問題ないが、そうでなかった場合はここまで一秒を削って走ってきた意味がなくなってしまう。
ふたつ目は、とにかく病院に送り届けた後、とって返してニニを呼びに行く方法。通常医療に適した病なら言うことなし、そして各病院には一応魔法療法の心得のある医師も詰めているから、妥当な方法ではある。しかし、ニーナちゃんの容体は素人目に見てもかなり重篤で、心得がある程度ではお手上げとなってしまう可能性が高い。そうなればひとつ目の方法より時間のロスは大きくなってしまう。
そしてみっつ目。
奥の手とも言える、DTG空間を使ったワープでニニの家の前まで乗り入れる方法。ニーナちゃんの病が魔法療法、通常医療どちらを要するものであっても、最も確実に時間のロスが少なく、必要な処置に送り届ける事ができる方法である。そして問題も少ない。強いて言えばDTGを起動する瞬間はそちらに魔法力を集中させるために、揺れを抑えることができないことぐらいである。
──トンネルを抜けたらDTGを起動しよう
スロはそう考えていた。
いや限りなくそのつもりで、さみちゃんにも伝えようと言葉を準備していた。
………トンネルの出口の先にカンテラの灯りを認めるまでは。
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