卒業式

3/3
2072人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
ーーーーーー仰げば尊し 三年生の歌う一番で自然と手を繋いだ女子四人 在校生の歌う二番に差し掛かった時には皆んなの涙腺が崩壊していた 私には短い東白の思い出も 皆んな其々に想いは深い 寒さだけでお腹の張りもないまま 順調に卒業式は進み 感動のまま退場の時を迎えた 入場とは逆で最初に退場する クラス名を呼ばれて立ち上がり 大きな拍手で見送られる 在校生の席を抜けた先で見えた 保護者席の最前列の顔ぶれに息を飲んだ 笑顔で拍手をくれるその列は 皆んなの両親が並んでいる その中央に一際強いオーラを放つその人に小さく会釈する 「おめでとう」 声は聞こえなかったけれど 笑顔のその人の口は確かにそう動いた ・・・ 退場したその列のまま教室へ入る 十二月の終業式以来の教室 黒板は卒業式の仕様になっていて絵も描かれていた その黒板前で順番にカメラに収まるクラスメイトを見ながら 変わらない席順にホッとする 「蓮、大丈夫?」 「うん」 後ろの席から声を掛けてくれる大ちゃんの声を聞きながら もう二度と戻らない時を感じる 「なんだか、寂しいね」 「そうだね」 寂しいと思えるほど 東白(ここ)に馴染んでたんだなぁって嬉しくなった きっとあのまま東美に通って卒業式を迎えても 六年間の思い出に浸ることはなかっただろう それに・・・ 卒業してもこの街へ戻ることは無かった だから・・・ 「幸せ」 此処に居られる幸せが口を突いて溢れた そんな私を後ろの席から見守ってくれる大ちゃん ん?何故分かるかって? それは・・・ 『僕もだよ』って返事みたいに 頭の上に乗る大きな温かい手ね
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!