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”空気人類”、この言葉を聞いた経験のある人はどれくらいいるであろうか。
たぶんほとんどいないのではないかと思う。
なぜなら、彼らは自分たちが空気人類であることを
非空気人類に口外することが強く禁じられている。
万が一他人に正体を知られてしまえば、命は保証されないと言う。
夜型空気人類は、昼は人間、夜は空気として過ごす。
対して、その昼夜が逆転したケースを昼型空気人類と呼ぶ。
空気状態のときは、体全体が無色透明になって宙に浮いており、
形は自由自在に変えることが可能である。
彼らは睡眠を必要としない代わりに、24時間活動し続けなければならない。
では、空気状態の間、彼らは一体何をしているのか。
空気中をただ考えなしに漂っているわけではない。
人間について回る”楽しい”や”悲しい”といったその場の空気に
大きく関与した働きも果たしているのだ。
空気人類は昼夜型の区別の他に、役割の観点からさらに二つに分けられる。
一つは先ほど述べた空気をつくる”ムードメイカー”、
もう一つは......。
今回は、一人のとある夜型空気人類に焦点を当て、その生活を見ていこう。
対象となるのは、32歳の会社員 田中一正。
同い年の妻と二人暮らしの彼は、どのように空気を全うしているのだろうか。
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