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「俺がどいたところでどうするつもりだ? 考えはあるのかい?」
木間瑞さんは田中を着実に怯ませようとしている。
田中は言葉に詰まった。
「あれ、田中さんどうかしたんですか?」
思ってもいない助け舟がやってきた。尾田谷佳奈の登場だ。
休憩がてら田中に会いに来たものと見える。
「丁度良かった! 佳奈ちゃんにここを任せてもいいかい?」
「え、まぁいいですけど......」
「それはありがたい。よろしく頼むよ」
代役は見つかった。
「おいおい、そこで勝手に話を進めてもらっちゃ困る」
木間瑞さんはまだ納得がいっていない表情だ。
「ただで退くわけがなかろう。
田中とか言ったなお前、向こうに電機屋が見えるか?」
200m離れた辺りに大型電気店が構えてある。
「あそこに置かれている巨大扇風機を潜り抜けてみろ。
そうしたら快く目の前から消えてやる」
その扇風機の大きさは、例えるのならば”国会議事堂”であろうか。
田中の家にある物とは比べるまでもない。
前回は首の皮一枚で切り抜けた彼も、流石に恐れをなしている。
「田中さん、無茶ですって! やめましょうよ」
佳奈もこれは危険だと田中へ必死に忠告をした。
しかし、田中は言う。
「確かにこの挑戦は無謀さ。でも、あの少年たちが可哀想だろ。
彼らには早く仲直りして明日を迎えてほしいからな」
イカした男である。惚れてしまう。
「よし、行ってくる」
「決して無理はしないでくださいね、田中さん!」
彼は佳奈の声援を背に、強大な敵へ立ち向かっていった。
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