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「うわ!」
「近寄るな!」
お巡りさんに言われ俺たちは後ずさりした。社長や町内会長や王さんたちは真っ青な顔をして固まっていた。中国人たちは割と平気な顔をしていた。取り引きに慣れているようだ。
しばらく膠着状態が続いた。その静けさの中、町内会長の息子はおもむろに包丁の峰で河豚を力いっぱい叩いた。
そこからが見事だった。
慣れた手付きで河豚のヒレを取り皮を剥いだ。丸裸になった河豚の身に包丁を入れ内蔵を取り出し部位毎に切り分けた。
そしてペットボトルに入った水を丁寧に掛け綺麗になった身を今度は長細い包丁を取り出しそぎ切りしていく。
薄く透けて見えそうな刺し身を発泡スチロールのフタに並べていく。
「ちょうど味見をするところでした。みなさんもどうぞ」
息子がそう言うと町内会長が小皿と醤油を持ってきてみんなに配った。もちろん俺と真昼野譲二にもだ。
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