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僕が体重計に乗ると、新宮医師と助手がパソコンの画面を覗き込んだ。
「彼、軽いですね」
「栄養の投与量を見誤ったのでしょう」
助手が言い、新宮医師が推察した。
体重計から降りて、よろける。新宮医師がすかさず支えてくれた。長い髪が重たい。
「素敵なのを付けていますね」
新宮医師の言葉に、一瞬きょとんとした。
「下のレストランで貰ったんです。入院してる女の子に」
思い出して、ポニーテールを持ち上げて見せる。新宮医師は口元を隠し、微笑んだ。
「可愛いですね」
頰がぽっと熱くなった。
助手がパソコンを閉じ、廊下に出ようとする。それを新宮医師が呼び止めた。
「この子たちのことを『彼』と呼ぶのはやめなさい」
彼女の射るような眼差に、助手はハッと息を飲んだ。
「すみません。無意識でした」
新宮医師が目を閉じ、誰にも分らないように小さく溜息をつく。
「私たちが違いを作ってどうするのよ」
「一層気をつけます」
「新宮先生」
二人のやりとりを不思議に見つめていた僕は、投げかけた。
「五つ目って何ですか」
「……何のお話でしたっけ」
僕は腰に手を当てた。
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