1人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば有紗、裕樹君も今日来てるけどもう会った?」
ちくりと胸が痛んだ。
「え、そうなんだ。いやまだ会ってないけれど」
自分でも意外なほど動揺したけれど、目の前のサワーを煽って、何でもないように平静を取り繕った。
友だちが指す方を見れば、そこには裕樹がいた。あの頃と何も変わらない。時にへにゃっとした笑顔を見せながら友だちと笑いあっていた。
「あんなに仲良かったのにね」
「二人は絶対付き合ってると思ってた」
「挨拶位してきなよ」
勝手なことばかり。無神経な言葉に正直腹は立ったけど、これも私が自分がそう振舞ってきたからなのだろう。私は面倒だったけど、何でもないことのように言葉を躱していた。
だけどお節介な友だちの一人が名前を呼んでしまい、そのとき裕樹と目が合った。合ってしまった。
裕樹は嬉しそうにこちらを見ながら手招いている。こういう無神経なところも昔のままだ。こうまでされたら無視するのもおかしな話。私は渋々裕樹の元へ行くことにした。
最初のコメントを投稿しよう!