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「あの夕日、綺麗だったよな。
俺さ、夕日を見る度、あのときお前に酷いこと言ったんじゃないかって思うんだ。だから謝りたかった」
そんなことない。そう言いたかったけど、それは声にならなかった。いまでもそう思ってくれたことが嬉しくて。
だけど裕樹は続けてこう言った。
「あのときお前が言ってくれた言葉のおかげで、俺ちゃんと告白しなきゃって思ったんだ。ありがとな、情けない俺に勇気をくれて」
「そんなこと」
私はそれだけ言って息を吐くと、脱力してしばらく何も言えなかった。
「あのままだったらいつまでも告白なんてできなかったんだから、感謝してよね」
「昔から情けないとこは変わんないんだから」気づけば私の口からはすらすらと言葉が出てくれた。もう大丈夫、いつものように振舞えばいいとわかったのだから。
私がそう言うと、裕樹はほっとしたような顔をして、過去の思い出を話し出した。ときにふざけて、ときに怒って、ときに笑って。
その左手の薬指には指輪が光っていた。
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