私が好きな人

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私が好きな人

「やっぱり、お前といるとラクでいーわ」  そう言ってへにゃっと気の抜けた顔で笑うのは小野田裕樹。同じクラスで、私の幼馴染。 「バカ言ってないでさっさとデートの一つでも誘いなよ、まったくヘタレなんだから」  そして私の好きな人。 「そうは言ってもなぁ」裕樹は頭を掻きながら言う。これは裕樹が気まずいときの癖だ。  私はいつまでこんなことを続けるんだろうと時々思う。   「女子相手だと緊張すんだ」  こいつはいつまでも私のことなんて見てくれないし、私の気持ちなんてこれっぽっちも興味がない。 「だからさ、その……楓ちゃんだっけ? 好きなこととか知らないの? そこからお近づきになればいいじゃない」  本当はそんなこと望んでなんかないくせに。私は私の口が勝手に無難なことを話すのを、他人事のように聞いていた。   「そんなこと聞ければ苦労しねぇよ~」  裕樹は呆れたように言った。  そりゃそうだ。私だってそんな風に言われたらそう思う。 「は~、どうしようかなぁ」裕樹が大きなため息をついて俯いている。そのうなじを見ていると心がぐらつくのがわかる。仕方ないな。私は意識をちょっと自分に取り戻して考えてみた。
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