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どうせ駄目に決まってる。私だってほとんど話したこともないし。せっかくの休日に、わざわざ知らないグループと遊園地になんて行くわけないよね。
放課後、半ば自分に言い聞かせるようにあの子に近づいていった。
あの子は友だち2人と話していて、最初は1人になるまで待とうかとも思ったけど、皆で帰ろうとしていたから慌てて引き留めた。
「あ、あのさ」
するとあの子はちょっとびっくりしたような顔でこっちを見ていた。
「突然ごめんね。今度の日曜って、暇?」
あぁ何言ってんの私。突然こんなこと言ったって答えられるわけない。
「今度友だちの裕樹と大吾の3人で遊園地に行くんだけど、チケットが1枚余っててさ。勿体ないから誰かほかに行く人探してて」
てんぱって口調が速くなっているのが自分でもわかる。こんなんじゃ駄目だ。
そのとき、彼女の鞄にあのキャラクターのキーホルダーがあるのを見つけた。
これだ! 私はついそれを指差してしまった。
「これ! ここの遊園地のキャラクター好きだったよね」
あの子と目が合う。気まずい沈黙が流れた。
……最悪な誘い方。ごめん裕樹。がっくりと項垂れていると、何やら友だち二人が静かに騒いでいるのが聞こえた。
何だろう?
顔を上げると、そこには私をしっかりと見据えるあの子の顔があった。
「……裕樹君も来るんですよね?」
「うんそう」私がつぶやくように答えると、友だち二人が手を取り合ってはしゃいでいるのが見えた。
「行きます」あの子は覚悟を決めたようにそう言った。気のせいか、その顔はほんのりと赤かった。
その後はほとんど覚えていない。呆気にとられている内に、いつの間にか連絡先を交換して、いつの間にか集合場所も決めていた。
裕樹にOKされたことを伝えると、いままでに見たことないくらい喜ばれる。あんた、そんな風に感情爆発させるのね。私は夢でも見ているんじゃないかという気持ちだった。
悪夢だ。
女の直感が告げている。多分二人はうまくいく。いってしまうって。
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