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「だって仕方ないじゃない。裕樹はあの子のことが好きなんだから。
あいつは私のこと、一度だって女として見てくれなかった。でもそれでよかったの。あいつの隣にいられたから。
いつまでも続かないことなんてわかってた。きっといつかあいつにも好きな人ができるって。それが私じゃないことも。
だけどそれでよかったの。だって私がこの想いを伝えたら、きっと傍にもいられなくなっちゃう。それはイヤなの!」
この想いを告げれば、いまの関係性を壊してしまうかもしれない。裕樹がいままでみたいに私の傍にいてくれなくなる。それを考えただけで、私は怖くて何もできなくなる。勇気を出して踏み出さなければダメだと言うなら、私には恋なんてできない。
この関係が壊れるのが怖い。
だからいまこの瞬間を大切に生きたいの。
いつの間にか涙が出ていた。私が慌てて涙を拭っている間も、大吾は黙って私の話を聞いていた。
そこへ二人が帰ってきたのが見えた。
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
私がそう言ってくるりと駆けだそうとしたとき、背中で大吾の声がした。
「何もしなくても、もうこのままじゃいられないよ」
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