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「しつこいぞ! 何度も言わせるな。そなたとの婚約は破棄だ! 金輪際、私とマリエッタに近づくな」
「ありがとうございます! ああ、殿下はやっぱりお優しいわ。先日、お会いしたい時に近々驚かせたいことがあると仰っていたのはこのことでしたのね?」
「ああ……そうだが……。その、アマーリア。そなた本当に分かっているのか?」
「ええ、もちろんですわ。殿下の御恩情は胸に刻み、未来永劫忘れませんわ」
アマーリアは両手を祈るように組み合わせて喜びに輝く瞳でアドリアンを見上げた。
「ああ。こうしてはいられませんわ。せっかく殿下にいただいた千載一遇の機会ですもの。勇気を出さなくちゃ」
アマーリアはドレスの裾をつまみ、まわりが見惚れるほどに優雅な仕草でアドリアンに一礼してから、くるりとあたりを見回した。
視線が広間の隅で、友人たちと成り行きを見守っているらしい、一人の青年貴族の上で止まる。
「クルーガーさま!」
アマーリアは、駆け寄ってくる自分を驚きの表情でみている彼の前で立ち止まると、とびきりの笑顔を浮かべて言った。
「ラルフ・クルーガーさま。お慕いしています。私と結婚を前提にお付き合いして下さい……っ」
頬を染めて、ぺこりとお辞儀しながら言い切ったアマーリアの言葉が終わるか終わらないかのうちに、広間は
「ええええっ」
というまわりの驚きの声で埋め尽くされた。
一番、大きな声で驚いていたのは、他ならぬ王太子アドリアンだった。
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