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2.公爵令嬢アマーリアは打ち明ける
蜂の巣をつついたような騒ぎになったその場からアマーリアを連れ出したのは、その日の婚約披露パーティーの主役の一人のはずだったアンジェリカと、その相手クレイグの妹であるミレディだった。
二人はアマーリアとは幼馴染であり、貴族の子弟たちが通う王立学院の同級生でもある。
茫然としているラルフに
「クルーガーさま。今日のところはこれで失礼いたしますわね」
と微笑みかけ、
「え、ちょっと待ってよ。私、まだクルーガーさまにお話が……」
と言いかけるアマーリアを両側から引きずるようにして退場すると有無を言わせずに馬車に押し込んだ。
着いたところはアンジェリカの邸であるエイベル公爵家だった。
突然の帰宅に目を丸くしている使用人たちにお茶の用意を頼んで、部屋で三人きりになった途端、アンジェリカが盛大に溜息をついた。
「まったく。人の晴れの日を見事にぶち壊しにしてくれたものだわね」
「ごめんなさい、アンジェ。私ったらつい……」
「あなたじゃないわよ。あのバカ王太子のことよ」
アンジェリカは憤然と言った。
「前々から賢いとは思っていなかったけど、あそこまでバカだとはね。呆れてものも言えないわ」
「そうよ。あんな場所で婚約破棄を言い渡すなんて。内々に、とか言ってたけど意味が分からないわ。リアのことを侮辱するのにもほどがあるわ」
気の優しいミレディは言いながら涙ぐんでいる。
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