3.変わってしまった婚約者

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3.変わってしまった婚約者

 騎士団の制服を着た、屈強な体格のラルフに睨まれた男たちは捨てセリフを吐く余裕もなく、あっという間に逃げ散ってしまった。 「お怪我はありませんか?」  ラルフがアマーリアの方を振り返った。 「勇敢なのは結構ですがあまり無茶をしないように。ああいった輩はカッとすると何をしてくるか分からないから」 切れ長の目をわずかに細めて彼がそう言った瞬間だった。 アマーリアが恋に落ちたのは。完全な一目惚れだった。 「一目惚れですって? 物語じゃあるまいし本当にそんなことってあるの?」 アンジェリカが目を丸くして言った。 「あら。アンジェは違ったの。──つまりは、兄さまと」 アンジェリカの婚約者クレイグの妹であるミレディが揶揄うように言う。 「もちろん違うわよ。私とクレイグさまが一緒になることはお父さま同士の間でずっと前から決められていたから、小さな頃から何度もお会いしてたくさんの時間を過ごしたもの。そのうえで愛するようになったのよ。一目惚れなんかよりずっと確かな愛情で結ばれてるの」 「それは失礼いたしました。でもまあ、そう言われてみればそうよね」 バランド公爵家の令嬢であるミレディにも幼い頃から決められた婚約者がいる。シュワルツ大公の長男のエリック公子だ。 そしてアマーリア自身もそうだった。 非公式ながら婚約者として王太子アドリアンに引き合わされたのは、アマーリアが六歳、アドリアンが九歳の時だった。
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