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ルーカスが最初に向かったのは、冒険者ギルドであった。
まだ勇者と呼ばれてはいない彼だったが、それでもセントラルでは数々の依頼をこなした有名人である。
そんな彼らがパーティーを一時的に解散したとなっては、冒険者ギルドで回す依頼に支障が出てしまう。
彼はまず、それを伝えるために。
そして、もう1つの目的を達成するために向かった。
5人目のパーティーメンバーとなるはずだった荷物持ちの少年、ライリーの存在だ。
直接的ではないが、ライリーをパーティーに入れたことで破滅した……とも取れてしまう未来を見た為、これが一番の懸念事項と言っても過言ではない。
彼をどうするかが問題だった。
ルーカスの出した答えは“崩壊する前にパーティーを一時的に解散すること”だ。
この方法を取れば、ライリーの存在は影響を及ぼさないと判断した。
いっそのことライリーを殺害してしまう、という選択肢もあった。だが、それは良心が痛む。
……村を救えなかった、せめてもの罪滅ぼしに、彼の安息の地を見つけてあげたいという考えがルーカスの頭には浮かんでいた。
そうこう考えているうちに、受付嬢に声をかけられた。
「あ、ルーカスさん。おはようございます。今日は一人ですか?」
「どうも。あまり大きな声で言わないで欲しいんですが、実は……」
「……え、修行のためにパーティーを一時解散?」
「はい。仲違いとかでは無いです」
「そうなんですか。そう……そうですね、ギルドとしましてもルーカスさん達に頼り過ぎていた面もありますし……これを機に新人育成をするべきですね……」
受付嬢はぶつぶつと独り言を喋り、ルーカスと話していたことを思い出してハッとした。
「あっ、すみません。本日の用件は以上ですか?」
「それと、一昨日くらいに保護を求めた少年の様子を見に来ました」
「ライリーくんですね。呼んできましょうか」
「お願いします」
受付嬢は裏に引っ込み、少し待った後、ライリーを連れて来た。
ライリーはルーカスの顔を見ると、何かに気付いたような表情を浮かべてから質問した。
「……あの、もしかして、僕を助けてくれた……?」
「うん、そうだよ。俺はルーカス。ルーカス・ブレイヴァーだ」
「ルーカスさん。僕を助けてくれて、本当に……本当にありがとうございました」
小さな体でお辞儀をする彼の手は、小さく震えていた。
魔物に襲われ、家族や友人を亡くし……住むところも無くなったのだ。無理もない。
気丈に振る舞っている少年を見るのは辛かった。
「ライリー。君が良ければ、だけど……君を保護してくれる人が見つかるまで、僕の旅に同行しないかい?」
「えっ!?」
罪滅ぼしがまず第一の目的。
で、あるが……ルーカスにとっては、要注意人物であるライリーを目の届く範囲に置いておくべきだ、というのが主な目的だった。
「はい、あの……僕としては助かりますが、その……僕は戦えないですし、お邪魔ではないですか……?」
「邪魔だなんて思わないさ。誘っているのは俺の方だし」
「それなら、ええと……お願い、します」
ライリーはもう一度、深く頭を下げた。
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