第1章 出会いと別れ

4/10
前へ
/16ページ
次へ
 目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。  日本と違ってこの世界アーンヴァールに時計の概念は存在しておらず、大まかな朝・昼・夜で時間を判別している。   「ふぁ〜あ、よく寝たわ〜! あ、ルーカスも起きたのね。体調はどう?」 「おはようアヴァ。昨夜は少し身体が痛んだけど、もう平気さ。心配してくれてありがとう」 「は〜!? 心配なんてしてないわよ! ま、元気ならそれで良いわ。とりあえず朝食にしましょ」  アヴァはベッドから跳ね起きて、さっさと部屋を出る。    ルーカスは周りを見渡したが、他の2人はもう起きているようだ。おそらくは彼らも宿屋の食堂にいるのだろう。  寝癖を手で軽く直しながら、ルーカスも部屋を後にした。  食堂に行くと、既に仲間たちは朝食を取っていた。 「あ、ルーカスさん。おはようございます」 「おはよう、ルーカス」 「2人ともおはよう」  ルーカスは木のイスに座り、宿屋で働くウェイトレスに食事を頼んだ。  1年も住み込んでいると顔馴染みになり、会話が無くとも通じるまでになっている。 「そういえばルーカス。なんか話があるから朝に集合してーとか言ってたわよね?」 「うん。……かなり深刻で、真面目な話になる。どうか笑わないで聞いてほしい」  真剣な目つきに変わったルーカスを見て、仲間たちもまた真剣な面持ちになり、うなずいた。  一拍置いて、ルーカスは話す。 「昨日、俺は気絶した時に、未来を見た」 「未来……ですか? それはどんな……」 「………………これから丁度1年後、俺たちは仲違いをしてパーティーは解散、そして魔王に敗れる……そんな最悪の未来だ」  仲間たちは息を呑む。  バランは腕を組んでしばし目を閉じた後、静かに口を開いた。 「…………未来は、変えられるのか」  それは話の核心であり、ルーカスが話したいことでもあった。 「変えてみせるさ。きっと、俺が未来を見たのは今からでも変えられる可能性がある……っていう、神様のお告げなんじゃないかと思うんだ」 「なるほど、神様が魔王討伐の為にご助力くださっているのかもしれませんね」  ニーナは神に祈るように手を合わせた。    アヴァはやや半信半疑といった感じでルーカスに問う。 「……ルーカス、アンタを疑うわけじゃないけどね? 未来を見たんじゃなくて、ただの夢だったってオチじゃないでしょうね」 「それは……どちらにせよ証明はできないから、俺を信じてくれとしか言えない。だけど、今から対策をしていても損では無いはずだ」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加