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目が覚めると、窓から朝日が差し込んでいた。
日本と違ってこの世界アーンヴァールに時計の概念は存在しておらず、大まかな朝・昼・夜で時間を判別している。
「ふぁ〜あ、よく寝たわ〜! あ、ルーカスも起きたのね。体調はどう?」
「おはようアヴァ。昨夜は少し身体が痛んだけど、もう平気さ。心配してくれてありがとう」
「は〜!? 心配なんてしてないわよ! ま、元気ならそれで良いわ。とりあえず朝食にしましょ」
アヴァはベッドから跳ね起きて、さっさと部屋を出る。
ルーカスは周りを見渡したが、他の2人はもう起きているようだ。おそらくは彼らも宿屋の食堂にいるのだろう。
寝癖を手で軽く直しながら、ルーカスも部屋を後にした。
食堂に行くと、既に仲間たちは朝食を取っていた。
「あ、ルーカスさん。おはようございます」
「おはよう、ルーカス」
「2人ともおはよう」
ルーカスは木のイスに座り、宿屋で働くウェイトレスに食事を頼んだ。
1年も住み込んでいると顔馴染みになり、会話が無くとも通じるまでになっている。
「そういえばルーカス。なんか話があるから朝に集合してーとか言ってたわよね?」
「うん。……かなり深刻で、真面目な話になる。どうか笑わないで聞いてほしい」
真剣な目つきに変わったルーカスを見て、仲間たちもまた真剣な面持ちになり、うなずいた。
一拍置いて、ルーカスは話す。
「昨日、俺は気絶した時に、未来を見た」
「未来……ですか? それはどんな……」
「………………これから丁度1年後、俺たちは仲違いをしてパーティーは解散、そして魔王に敗れる……そんな最悪の未来だ」
仲間たちは息を呑む。
バランは腕を組んでしばし目を閉じた後、静かに口を開いた。
「…………未来は、変えられるのか」
それは話の核心であり、ルーカスが話したいことでもあった。
「変えてみせるさ。きっと、俺が未来を見たのは今からでも変えられる可能性がある……っていう、神様のお告げなんじゃないかと思うんだ」
「なるほど、神様が魔王討伐の為にご助力くださっているのかもしれませんね」
ニーナは神に祈るように手を合わせた。
アヴァはやや半信半疑といった感じでルーカスに問う。
「……ルーカス、アンタを疑うわけじゃないけどね? 未来を見たんじゃなくて、ただの夢だったってオチじゃないでしょうね」
「それは……どちらにせよ証明はできないから、俺を信じてくれとしか言えない。だけど、今から対策をしていても損では無いはずだ」
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