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「修行か。良い響きだ」
「私は……ちょっと不安です。皆さんと離れて1人で旅するなんて……」
「アタシは賛成よ。未来がどうとか置いといて、最近は張り合いなかったから魔法の腕が鈍っちゃってるのよね」
「──それで、修行の期間なんだけれど、俺は1年間を目安に考えてる」
「1年か……ちょっと長くない?」
「何が原因でパーティー解散に至るかが確かじゃ無いから、1年後……つまり、352年の闇の月15日を越えるまで、僕たちはなるべく集まらない方が良いと思う」
「不確定要素の排除。随分と心配性だな」
「まぁね。でも、魔王がどんな手を使って仲間割れをさせてくるか分からない以上、未然に防ぐしかないんだ」
ルーカスにとって、これは賭けに近かった。
別の可能性を考慮するならば、“ルーカスに偽の未来を見せてパーティーを分断させようとしている”、という攻撃かもしれないとも考えることはできる。
ただ、未来にある無数の可能性を全て考慮すると疑心暗鬼になり、それこそ仲間割れを誘発してしまう。
知性ある生き物にとって最大の恐怖とは不安なのだから。
「俺の話は以上だ。今日1日は休みにするから、各自で良く考えておいてくれ。明日の朝、もう一度話し合おう」
「了解した」
「おっけー」
「……はい」
話し合いはひとまず終わり、自由時間となった。
仲間たちが宿を出るのをルーカスは見送る。
「ふー……さて、どうするかな……」
1人になったことで彼の思考は更に巡る。
この選択は本当に正しいのだろうか。いや、きっとどんな選択をしても後悔はするだろう。
その時その時で最善を選択しているつもりでも、傍から見れば愚策を取っていることもある。
……他人にどう思われるかじゃない。大事なのは、自分がどうしたいかだ。
未来が見えたのは嘘じゃない。そして、そんな最悪な未来には決してさせない。
(運命を……変えてみせる)
ルーカスの決意は固かった。
「……気晴らしに、俺も街に行くか」
ルーカスは軽装に着換え、愛用している剣を背中に携えて宿を出た。
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