第3章 10話 結

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 ワナワナと震えていると、王子は寒がっていると捉えたのか、抱き起こしてベストを肩にかけてくれた。そして両手を包むように握りじっと見つめてきた。憑き物でも取れたかのように、いつもの清々しいまでにロイヤルな微笑みと、聞いたこともないほどとびっきり甘い声で告白された。 「ミズリー、僕はあなたが欲しい。誰のものでもなく、僕だけの」 「アレン様……」 「あなたの気持ちを知ったのだから、もう遠慮はしない。国へは帰さないから。僕の妃になって」 「え、あっ」 (きゅ、急展開すぎて、え? 私、アレン様と両思いなのっ?! な、ならばっ、ちゃんと私も気持ちをお伝えしなければっ)  ゴクンと生唾を飲み込み見つめ返した。 「ミズリー」 「はいっ」 「ちゃんと、仕切り直させて欲しい」 「はいっ」 「先ほどまで、無我夢中で、必死になりすぎてて……、だから、お互いを敬いながらの子作りをもうい、」  ミズリーはアレンが言い終わる前に、目の前にぶら下がる金の笛を掴み、腹の底から吹き鳴らした。  ピーーーッ。  鋭い音が白霧を突き破るように飛んでいった。  疲労やアドレナリンで麻痺していたのが時間経過と共に正常を取り戻し、ズキズキと処女だった場所が悲鳴を上げはじめたところでのリベンジ発言に、恐れをなして最大の肺活量で(色んな意味での)救助を要請した日から時を開けること数日。  あれよあれよと言う間に話は進んで、ミズリーはアレン王太子の正式な婚約者となった。  何かに追われてるのかというくらいアレン王子が話を強引に進めていった成果である。  さらには意外にも国王がアッサリ許可を出したことだった。後から聞いた話によると、どうやらアレン王子が常々散々脅してきていたらしい。「僕はもう誰とも結婚しない」「王太子としての世継ぎは諦めてください」等の旨を。そこに来ての急転直下な王子の「結婚したーい!」発言に、むしろ飛び付くように頭を縦に振ったらしい。  そして、私達を取り巻く人物達。  城に戻ってきた時に散々怒ったのだが、ジェームズはまったく反省していなかった。むしろ「だからオレは謝罪の意味でお前を王子の旅に行かせてやったんだ」とふんぞり返る。さらには、「人妻ってのも、むしろ燃えるな……」とニヤニヤしはじめる、タチが悪い。  もう一人、ケリー王子。なにやら頻繁に隣国のエルセンブルクに足繁く通い始めた。何気なくベルナルド様に聞いてみると、「新薬の開発に取り掛かっているようですよ。なんて言ってましたかな。ああそうそう、確か癖毛を真っ直ぐにする薬とか。なんの役に立つのでしょうね」と言われて顎が落ちた。その日から、なりすまし状態で寝込みを襲わせないように、新しく与えられた部屋の前には警護班を置いてもらうように頼んだ。ほんとタチが悪い。  そしてそして、アレン様と私。  仲良く過ごしています、うん。変わらず清廉潔白で、優しく紳士で。照れたりスネたり、色んな表情を見せてくれます。  ただ、天然ドSが魔性レベルになってきていることを、ご報告させていただきます……。 【完】
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