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第1話
両腕を束縛されたままベッドの上に押さえ込まれ、抵抗する術は何もなかった。
「放せッ!」
そんな言葉が、この場合なんの役にも立たない事はよく解っていたけれど、それでも叫ばずにはいられなかった。
「シノさんって、女のコみたいに感じやすいんだね。初めてだなんて思えないくらい、反応イイじゃん」
ざらついた舌で乳首を舐め上げられて、思わず声を上げてしまう。
「普通に喋ってる時も、シノさんの声にはドキドキさせられたけど。今はもっとドキドキするよ。もっとたくさん感じさせてあげたくなる感じ」
「や…めろって!」
どんなに声を荒げて叱責しても、多聞はその行為をやめようとはしなかった。
そして、どれほど大きな声で叫んでも、助けが来ない事は、柊一自身よく解っていた。
都会からは遠く離れた、山あいのログハウス。
洒落た作りの外観を持つそのログハウスを、多聞は別荘代わりに買ったのだと言った。
「俺、ココを買ったのシノさんにしか教えてないんだ」
最初に此処に連れてこられた時、気の優しい大型犬を思わせる懐こい笑みを浮かべ、そう言っていたのを覚えている。
交通の便が悪く、移動には車がなければ話にならない土地だった。
「だから、世間が煩わしいって思った時には絶好の隠れ場所になるだろ。この合い鍵、シノさんに進呈するよ」
差し出されたちょっと旧式の錠前の鍵を受け取り、柊一は怪訝な顔をして見せた。
「なんで俺に? そりゃあ、そう言う場所があればイイって思った事はあるけどさ」
「俺が隠れてる時、シノさんが黙っててくれるようにだよ。同じようにシノさんがココを使えば、シノさんだってココを他人に知られたくないって思うでしょ? 共犯者になって貰おうと思って」
いたずらっぽく笑った多聞に、その時はそんなものかと思っただけだったが。
まさかその場所に、自分が監禁されるなんて想像もしていなかった。
「テメェ…いい加減に…ッ!」
罵声を浴びせようと口を開いた時、多聞はそれを待ちかまえていたかのように柊一の感じやすい部分に歯を立てる。
瞬間、全身を駆け抜けた甘い衝撃に、開きかけた口から自分でも驚いてしまうような艶めかしい声が上がる。
柊一は身を捩って、その場にあった羽毛の詰まった枕に顔を押し当てた。
「声上げるの我慢すると、余計に感じちゃうよ?」
多聞は、さも楽しそうにクスクスと笑う。
「ほらココ、余計に堅くなってる。可愛い声、聴かせて…」
根本を押さえ込まれ、熱を帯びたその器官を舐め上げられても、柊一は必死になって声をこらえていた。
「意地っ張りだな、シノさんは…。…でも俺はシノさんの声が聴きたいから、シノさんがお願いって言ってくれるまで、イカしてなんてあげないよ…」
噛みしめた口唇が切れたのか、口中に苦い味が広がった。
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