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働かざる者食うべからず、の教え
長距離の移動、それに炎天下に長時間歩いた疲労もあって、陸は夕飯のあとすぐに眠ってしまった。
次の日、千代は、そんな陸を早朝の六時前にたたき起こした。
「んだよ……もう少し寝かしてくれよ……」
「ここで暮らすつもりなら、きりきり働きな。どうせしばらくは学校に行くわけじゃないんだしね」
「はぁ……?」
「畑は待っちゃくれないんだよ」
再び布団に潜り込もうとする陸を、千代が首根っこをつかんで引きずり出す。ばばぁのくせに乱暴なんだよ、ったく……。
「ほら、起きな」
鉛のように重い体を無理矢理起こして、枕元に脱ぎ捨てた昨日のTシャツを頭からかぶった。むっと汗の匂いがする。
のろのろとジーンズに足を通していると、外から軽トラのエンジン音が聞こえた。
「ほら、もたもたしてんじゃないよ!」
せっかちにもほどがあるだろ……。寝癖のついた頭を掻いて欠伸をしながら、陸は軽トラに乗り込んだ。ソラも慣れた様子で荷台に繋がれている。
「つーか、軽トラあるんだったら迎えに来てくれりゃよかっただろ」
「あんたがバスにも乗れないとは思わなかったんだよ」
「だからバス停がなかったって言ってんだろ。だいたい吉田さんだって知らなかったぞ」
「でもバスは走ってたんだろ?」
口ではとても勝てそうにない。陸は、大きな欠伸をひとつすると、ほぼ直角の固いシートに体を預けて窓の外を眺めた。
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