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「つ、着いた……」
千代の言った通り、その小屋は歩いて三十分(よりちょっと掛かったけれど)のところにあった。
屋根と壁だけの粗末な小屋。建てられてからもうだいぶ時間が経過しているようだが、掃除や手入れはされているらしく、外観はそれほど痛んでいなかった。
誰に言うわけでもないが、黙って入るのもどうかと思い「お邪魔しまーす」と声を掛けて引き戸を引く。ガタガタと音を立てて開けると、驚いたことに小屋の真ん中辺りの床にも赤いロープが貼り付けてあった。
「なんだよ、これ」
薄暗さに目が慣れると、四畳ほどの広さのその小屋は、外観から推測したよりも、しっかりと作られているようだった。
そして、床に貼られたロープの向こう側にはもう一つの入り口があり、そちらの引き戸は上の三分の一が格子戸になっていて、そこからわずかに光が差し込んでいる。
背負ったカゴを下ろし、床に置いた。
この小屋にはそのロープと、陸がたった今置いた野菜の入ったカゴ以外、何もなかった。
まるで捨て置くようで気が引けたが、千代の言い付け通りカゴを置いて小屋を出る。
いったいなぜ、千代はこんなことを頼んだのだろう。
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