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「本当に! 申し訳ありません! でした!」
「た!」のところで、大きな手で頭を押さえつけられた陸は、つやつやしたテーブルに強かに額をぶつけた。
隣で一緒に頭を下げているのは、鬼沢孝男。陸の父親だ。
スポーツ刈りにされた黒い針金のような髪。手だけじゃなく体全体が、そしてついでに声もデカい。元ラグビー部で、細身の陸の横にいるとまるで岩山のようだ、とは母親の由梨子の言。
「痛ぇな、クソ親父」
「うるせぇ黙ってろ! こういうときは、取りあえず頭を下げるって決まってんの! 許してもらえりゃこっちのモンなんだぞ!」
全く隠すつもりのないひそひそ話をしていると、つやつやのテーブルの向こうから、ゴホンと大きな咳払いが聞こえた。これまたつやつやした頭の校長が苦々しい顔で二人をにらんでいる。
三人の現在地は、陸が通う高校の校長室。
先ほどの乱闘騒ぎで……というよりも、度重なる陸の問題で親が呼び出された日に、先ほどの件が重なった、というのが正確なところだ。
「とにかく、鬼沢くんの暴力行為は今回が初めてではないですし、それに、ちっとも反省されていないようですしね」
こちらをにらみつける校長の後ろには、歴代の校長の写真がズラリと並んでおり、一緒になって陸をにらみつけている。
一人くらいにこやかにしたっていいだろうに。もしかすると、この部屋に長いこといると、あんな顔になんのかな。つーか、今の校長は歴代で初のハゲなんだな、いや右から三番目と五番目のヤツはズラっぽいな。
陸はこの部屋で説教される度に同じことを考えていた。
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