追放

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「ほら、反省してないってバレちゃっただろ!」 「いや、親父のせいだろ」 「どちらもです!」  校長は拳でドン、とテーブルを叩いた。三つの湯飲みがガチャンと飛び跳ねて、お茶をまき散らす。 「鬼沢くんのせいで、我が校には悪い噂が絶えないんですよ。誰が言ったんだか、あの高校は鬼ヶ島だとか。まったく嘆かわしい……」 「いやー、うまいこと言いますね」  孝男はガハガハ笑ったが、校長の冷たい視線に気付いて大きな体を縮こまらせた。 「校内だけでも問題だというのに、他校の生徒ともよく揉め事を起こす。正直、ほとほと困っているんです。生徒たちも怖がっています。なんですか、『オニ』と関わるとひどい目にあうとか。鬼沢くんの存在は、我が校にとってマイナスと言っていいものです」 「退学しろってことっすか。別にいいっすけど」  陸は、こぼれたお茶を拭きながらそう言った。このままここにいたら、俺まで校長みたいな顔になっちまうかもしれねーしな。そんなのごめんだ。 「親父の事務所で働かせてくれよ。そのほうが気楽だし」  孝男は自宅の一階で建築事務所を営んでいる。規模は小さいが、孝男の人柄か由梨子の営業力か、仕事は順調だ。 「馬鹿野郎、あれは俺と母さんが築き上げた商売なんだからお前なんかに継がせませーん。悔しかったら俺に「雇わせてください」って言わせるくらいの男になってみろ」 「はぁ? 息子が路頭に迷ってもいいのかよ」 「おう、迷え迷え。それが大人になるってことだぞ」  ゴホン! 先ほどより大きい咳払いが強引に割り込んでくる。 「ともかく、鬼沢くんは我が校に相応しくありません! 退学届を出すかどうか、今後のことはご家族で相談してお決め下さい!」  問答無用とばかりに、二人は校長室から追い出された。
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