追放

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****  校舎を出ると、陸は大きく伸びをした。空が夕陽でオレンジ色に染められている。 「仕方ねーからバイトでも探すかな」 「お前、もうちょっと落ち込めよ。これから母さんに怒られちゃうんだぞ」 「そっちかよ」 「鬼沢くん!」  振り向くと、先ほど囲まれていたメガネ――岡嶋優斗(おかじまゆうと)が走り寄ってくる。 「おお、岡嶋。どうした?」 「どうしたって……。鬼沢くんが退学になるって聞いたから」 「厄介者がいなくなるってみんな喜んでんだろ」 「そんなのおかしいよ! 鬼沢くんは僕を助けてくれたのに……。僕、校長先生に話してくる!」  駆け出そうとする岡嶋の腕を、陸がつかむ。小柄な体がぐらりとバランスを崩し、岡嶋は尻餅をついた。 「いたた……」 「お前、ホントどんくさいな。そんなんだから奴らに絡まれるんだよ」  岡嶋を引っ張り上げて立たせると、陸は呆れたように言った。 「それとこれとは別だよ。それより、何で止めるのさ」 「あの校長が俺を退学にしたいのは、俺が気に入らないからだよ。お前が何を言ったって変わんねーよ。ムダムダ」 「お前、何でそんなに嫌われてるのよ」  孝男の問いに、陸は心当たりしかなかったが、一番の原因は入学式の後、上級生と乱闘騒ぎを起こしたときの説教中に「うるせーハゲ」という大きめの呟きを聞かれたことだろうな、と思っている。  そう考えれば、あの校長も一年以上我慢したんだから大したもんだ。 「まぁいろいろあったんだよ。だから、退学になるのはお前のせいじゃない。気にすんなって」   陸はまた大きく伸びをした。孝男と岡嶋が呆れたようにその姿を見ている。  湿っていた風は先ほどよりもずっと軽やかになり、夏の気配を強めていた。
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