追放

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「ほら、あの辺は田舎だから、ここと違って殴り合うような相手も少ないし。それに、ばあちゃんもずっと一人だろ。孫と二人暮らしっていうのもいいかなって。高校は、近くに俺の母校があるし」 「いやいや、待てって! あんなクソ田舎に行くなんて冗談じゃねーぞ」 「あら、いい考えだと思うわよ。自然に囲まれて暮らしたら、少しは毒気が抜けるんじゃない?」  両親の行動も素早かったし、祖母の了承も素早かった。  電話を掛けてものの十数分で、こちらの高校は辞めること、夏休み明けにそちらの高校に転校すること、そして向こうの生活に慣れるため、陸は可及的速やかに祖母の家に向かうこと、が決まった。  陸が口をはさむ余地などまったくなく、最後に由梨子から「挨拶くらいしておいたら?」と渡された電話だけが、唯一の発言権だった。 「よぉ、ばあちゃん。突然俺が行ったら困るんじゃねーの」 「好きにしな」  そう言われたと同時に、ぶつりと電話が切れる音がした。あのばばぁ……。 「あら、もうこんな時間。陸、あなたたちが引きずってきたんだから、責任もって、岡嶋くんのこと送っていきなさい」  由梨子にそう言われて、陸と岡嶋は家から追い出された。
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