追放

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**** 「なんか、ホントにごめんね。僕のせいで……」  帰り道も、岡嶋はずっとしょんぼりしていた。 「だから、お前のせいじゃねーって言ってんだろ」 「ごめん……」 「そんなにヘコヘコ謝ってばっかりだから、あいつらにも馬鹿にされるんだろうが。人のことなんか気にすんなよ」  岡嶋を見ていると、陸は何だかイライラした。  卑屈な態度のせいだけじゃない。もっと、何か奥のほうで疼いているものが陸の心を揺さぶるのだ。  初めて岡嶋に会ったのは高校の入学式。  岡嶋と鬼沢、で出席番号が前後していたせいで、この高校で初めて口をきいた相手でもある。  事件は入学式が終わったときに起こった。陸の赤毛に目をつけた上級生が絡んできたのだ。売られたケンカは残さず買ってきた(そして勝ってきた)陸は、その日ももちろん買った。たちまち、きゃあとかわーとか声が上がって大騒ぎになった。  何人かを殴り飛ばしたとき、後ろから「危ない!」と声がした。陸が振り返ると、パイプ椅子を振り上げた上級生の腰にしがみついている奴がいた。それが岡嶋だった。 「な、なんだよ、こいつ!」  しがみつかれた方は、振り払おうと必死に腰をくねらせていた。その姿があまりにも滑稽で、この騒ぎにクスクスと笑い声が混じる。 「離せよ、この。離せってば!」 「おめーがな」  その手からパイプ椅子をもぎ取ると、顔に一発ぶちこんでやった。吹っ飛んだ上級生と一緒になって、岡嶋まで廊下を転がっていく。 「あたた……」 「――大丈夫かよ」 「う、うん。ありがとう。鬼沢くん、強いんだね」  陸の差し出した手を岡嶋が取って立ち上がった。  そして、その日から岡嶋は『オニ』の子分として、全校生徒と教師に認識されることになる……。  つまり、岡嶋がガラの悪い連中に絡まれる原因は陸なのだ。それなのに、当の岡嶋はのほほんとして、陸に恨み言のひとつも言わない。あげく、勝手に責任を感じてこんなに落ち込んでいる。  変なやつ。
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