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目が覚めると、そこは異世界の光景が広がっていた。
「…ここは一体」
俺は夢を見ているのか?
古い町並み。
商売をする声。
路地ではしゃぐ子供たち。
一見すると、過去へとタイムスリップしたように感じられるが…。
「どう見てもおかしいだろ」
俺は人間だが、周りがすべて奇妙だ。
首が長い浴衣を着た女。
手足が異様に長い短髪の男。
「…」
周りの奴らは、人間である俺を見て、ひそひそと話しをしている。
だんだんと妖怪が集まり始めた。
怖くなって、人気のない路地へと駆け込む。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
とにかく走った。
あのたくさんの奇妙な視線から逃れるために…。
ひたすら走った。
なりふり構わず、遠くへ遠くへと。
気が付いたら、人気のない森の中を走っていた。
息が切れ、走り疲れて、木の根元に座り込む。
いったいここはどこなのだろうか。
日が沈み、辺りが暗くなっていく。
それに呼応するかのように眠気が襲ってくる。
「…」
このまま眠りにつけば、いつもの世界だろうか。
今見ている世界が夢であることを願いながら、ゆっくりと目を閉じた。
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