第1話 気付いたら俺は女子高生だった

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この日の夜も数々の大物著名人を呼んで都内の帝国ホテルで盛大に俺を励ます会を行い、俺は数十億の売り上げをたたき出してやった。だから俺が今でも党の代表にいられる理由だ。 俺なくして我が党は成り立たない。だが俺はこの日、大切なことを忘れていた 夜9時、俺が上機嫌に酔っている支援者達をお見送りしていると、ある家族連れのお客がラッピングされた大きな箱を10歳位の少女に渡している姿が目に映った。 「お誕生日おめでとう」 「ママ~ありがとう」 無邪気な笑顔で喜ぶ少女。俺はあることを思い出していた。 「そう言えば娘のユイカももうすぐ誕生日だったよな」 俺には10年ほど前に離婚経験があり、その時から幼い娘と会えずじまいさ。こんな俺だって毎年、娘の誕生日にはぬいぐるみなど喜びそうな物を送ってやるんだ。 だが決まって返事は元嫁からの 「娘に関わらないで下さい」 と言う殴り書きのラブレターだ。 さっきまで大スターのような扱いを受けた俺が祭りの後のような気分になり、妙な喪失感に襲われちまった。心の奥に穴が空いた気持ちだ。 「幸せって何なんだよ‥ 」 俺が上の空でその家族の光景を見とれていると、秘書の小竹向原が俺の事を心配した表情を浮かべながら何度も俺を気遣った。 「先生、大丈夫ですか? 」 「ああ、問題ない。俺は時給10億稼ぐ男だからな」 ワハハハハ
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