第1話 気付いたら俺は女子高生だった

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この厳格な俺様がこんなくだらないことで落ち込んでいたら、国のトップなどやってられないぜ。俺は何事も無かったかのように振る舞った。 秘書の小竹向原薫子は24歳の眼鏡女子だ。見た目だと高校生に見られるかもしれないな。こいつは数年前、俺の街頭演説を聞いて、ファンになったという。それ以降、俺の事務所に毎日来ては土下座をして 「私を先生の秘書にさせてください」 やはり俺の素晴らしい人間力が解っていると感心した俺はコイツを秘書として雇ってやった。 「先生~ 実は迎えの車を手配するのを忘れてしまいました」 「おい、どう言う事だよ 」 「代わりに私の愛車でご自宅まで送らせて頂きます」 だがコイツは変なところが抜けていて何時もドジを踏みやがる。 仕方ない、ここは奴の愛車というモノに乗ってやることにした。すると奴は満面の笑みでホテルの入り口に車を回してきたのだが‥ 「俺がこんな車に乗れるか! 」 奴の車は、赤のRX-8にお気に入りのメイド服姿の女子がプリントされている車だった。 奴の話によるといわゆる 「痛車」 と言うモノだ。ただでさえ世間から痛い人になっているのにこんな車に乗れるわけがないが、こんな所で騒げばまたマスコミというハエ共が集ってくる。俺は渋々助手席に乗ることにした。 ホテルを後にした俺はどうしても先程の家族の光景が頭から離れなかった。男として恥だと心の中で叫びつつも、どもりながら小竹向原にあることを頼んだ。
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