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お化け屋敷への誘い
「……これで帰りの会を終わります。
最近子どもの失踪事件が増えているから、くれぐれも不審者には気をつけるように」
先生の言葉が終わると同時に、わっとクラスメートの皆は立ち上がり、蜘蛛の子を散らしたように教室から出て行った。放課後、サッカーをするために飛び交う名前に、僕の名前が呼ばれることはない。
僕がいつものように独りで帰ろうとしたときのことだ。
「なぁれお、一緒に帰らないか?」
近所に住むケンちゃんが僕に声を掛けてきた。何のドッキリかもしくはいじめだろうか。僕は周りを見るけれど、教室には既に僕らしか残っていなかった。
「別にいいけれど」
僕がそう答えると、ケンちゃんはにぃって、いつものように笑うのだった。どうやら今日の放課後は、ろくなことにならないようだ。
「知ってるか?」
帰り道、ケンちゃんは前を後ろ向きで歩きながらにやにや笑いながら言ってきた。
「通学路の途中に古い屋敷があるだろ?
じつはあそこ、出るらしいんだよ」
ケンちゃんはそう言って僕の顔を伺ってくる。怖がる顔が見たいんだ。だけど僕がなんてことない顔をしていると、つまらなそうに顔を歪めて前を向いた。
「お前お化けが見えるらしいじゃんか。変なこと言って気を引こうとする変な奴って、皆言ってるぜ」
嘘だ。僕はお化けが見えるなんて一度だって言ったことない。ただ当たり前に見えることを、見えるって言っているだけだ。
「だから今日は霊感少年のれお君に、お化け屋敷のせんにゅうしゅざいってやつをお願いしたいと思いまーす」
そう言ってケンちゃんは僕の肩をがっしり掴んで押してきた。どうやら今日はこのまま帰れないらしい。
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