ケンちゃん

2/4
前へ
/8ページ
次へ
「ここにはな」  それどころかカメラをこちらに向けながら、ぼそぼそと話を始めるのだった。 「仲のいい兄弟がいたんだ。  弟は俺らと同じくらいの歳で、それは可愛い顔をした女の子だったらしい。  年の離れた兄はそれはもう妹を可愛がった。  ……だけどある日そんな二人を悲劇が襲った。二人の仲を妬んだ両親が、兄から妹を引き離そうとしたんだ。  兄は必死に妹を守ろうとした」  ケンちゃんは何かに憑りつかれたように話続ける。 「だから兄は両親を殺し、もう二度と妹を奪われないように、とある場所へ妹を隠した」  ケンちゃんはそう言って、ぴたりとある場所で歩みを止めた。ケンちゃんが燭台を動かすと、ギッという音とともに、そこには壁がずれるようにして隠し扉が出現したのだった。  思わず怖気づき後ずさりしようとする僕。だけどその手を、ケンちゃんはがっしり握って離さない。僕はずるずると中へと引っ張り込まれるのだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加