ケンちゃん

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 ケンちゃんはそう言いながら僕のスマホを拾いあげ、ガラス瓶のひとつひとつをゆっくりと照らし出す。 「妹は猫が好きだったらしい。だからここにはホラ、たくさんの猫がいるだろう。三毛にペルシャにスコティッシュ。優しい兄はどんな妹の願いも叶えた」  そこでぴたりと、ケンちゃんの動きが止まった。 「だけどたった一つ。兄が許せないことがあったそうだ。  ある日妹は言った。 『外に出たい、もうお兄ちゃんなんて嫌い』ってね。  兄は信じられなかった。妹のために、兄がどれだけどれだけつくしたことか。  ……だから兄は可愛い妹を閉じ込めた。もうこれ以上うるさい口をきかないように。もう二度と傷つかない、可愛らしい妹のままでいられるように」  ぴかりとケンちゃんはあるガラス瓶を照らし出した。それは棚に中央に置かれ、一際大きく、そうヒトの首が丸ごと入る大きなものだった。そして中には。 「うわーーー!」  僕は思わず悲鳴を上げてそこから目を逸らした。生首なんて初めて見たのだ。  それを見たケンちゃんは、ケタケタと腹を抱えて笑っていた。そしてさらに言うのだ。 「なぁれお。妹は独りじゃ可哀そう。そう思った兄はどうしたと思う?」  僕はゆっくりと周りを見渡す。まさか、そんなことがあるはずがない。 「そうだよ、お前もわかっているだろう。  兄はここに、妹と同じ年齢の子どもを招いた。妹が寂しくないようにってな」  妹の首のすぐ隣には、僕もよく見たことのある首があった。そう、そこにあったのは、ケンちゃんの首だったのだ。 「なぁれお、お前もここで、一緒にいよう」  そこにぎしりと足音がした。  
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