『アンタ 落としてるよ』

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「アンタ 落としてるよ」 ーーーーーーーーーーーー 俺の仕事に休みはない。 曜日は関係ないし 早朝だろうが真夜中だろうが 呼び出されたら現場に向かうしかない。 このコロナ禍の世の中。 俺の仕事は着実に増えている。 10月、pm、6 時15分。 都内のオフィス街の真ん中あたりに位置する駅。 多くの会社員たちが帰宅する時間。 駅構内はマスク姿の人間が溢れていた。 ーーーあいつか。 今回の仕事のターゲットがわかった。 見るからに悲壮感を漂わせている。 グレーのスーツをきて肩を落とした会社員らしき男性。 すでに足元がふらついている。 人があまりいない端の方のホーム。 うなだれてようやく立っている感じだ。 その1 メートル後ろにドス黒い影が見える。 いたいた。 黒い影は、すこし宙に浮いているようにも見える。 人のようでもあり、そうでないようにも見える。 そいつが俺の方へ向いた。 ーーーおっと ったく、 いつ見てもゾッとするヤツだ。 ヤツとは、もう何億回もあっているが未だになれない。 仲良くなりたくないヤツには違いない。 ヤツは、いつもターゲットの後ろに存在している。 基本ボーーっといるだけ。 俺の仕事のあと、すこししてからようやく動いて≪それ≫を刈る。 それだけ。 ヤツの仕事は、簡単で羨ましい。 ターゲットと顔を合わせる必要も話しかける必要もないのだから。
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