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本棚に追加今回のターゲットにも俺は
「アンタ 落としてるよ」と額をつき
ホームから落ちるときに
『記憶』という落とし物を返すだけ。
キキギーーーーーーーーーッ!!!
電車のブレーキ音。
俺の仕事は、ここで終わり。
ぐちゃぐちゃになったターゲットを見るのは仕事の範疇じゃない。
見たくもない。
慌ただしく動く駅員。
ホームに集まる野次馬。
今日のターゲットに見せた記憶は、幼稚園の頃の運動会でのお弁当を家族みんなで食べる場面、高校受験、楽しかった大学生活、恋人との出会い、初めての抱擁、子供が二人産まれて、家族との団らん、娘の反抗、
巣立っていった息子、家を出ていった嫁。
最後に
父の日に幼い頃の娘からもらった手紙、それをみて涙する自分。
せわしなく生きていくうちに
人間がないがしろにし
落としていった記憶の数々。
俺の仕事は『落とし物』を持ち主に届けたら
ただちにその場を去る決まりだ。
向こうからきて俺の横を急いで通りすぎた女が無言でスマホを手にしていた。
カシャカシャと
連写する音がした。
ーーー何を撮りたいんだ?
電車に飛び散った鮮血か
それともグロテスクな肉片か。
なんにしても趣味が悪い。
あの人間は、まだ知らない。
そんなものを撮った者のあの世での
恐ろしい末路を。
ーーーま、
そんなことを教えてやる必要もねーか。
なにしろ、
俺の仕事は、
ただ、
死ぬ直前の人間に
≪落とし物≫を届けるだけなのだから。
fin

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