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ピエロのオルゴール人形
数日後の土曜日の昼、僕は莉紗と仲良く近所の「江戸前寿司 前田」でお寿司を食べている。
二人が寿司を食べている時、その寿司屋の前の道路を、高原華が左手で赤い薔薇の花束を、右手に友人への誕生日プレゼントを入れた白黒の水玉模様の手提げ袋を、大事そうに持って歩いている。
その手提げ袋には、友人の咲が欲しがっていたピエロのオルゴール人形が、紙箱におさめられて入っている。
華は、ハーフを思わせる面立ちの魅力的な小柄の20代の女性だ。
道路の左側に面した「スーパー大福」の駐車場から走って出てきた20代の大柄の男性の右腕が華の細身な体にぶつかり手提げ袋とバラの花束が弾き飛ばされた。
幸い花束は直ぐ見つかったが、プレゼントの箱は何処かにいってしまった。
男性は急いでいるらしく
「ごめん、急いでいるから」
一言謝り男性は走り去ってしまう。
途方にくれた華は、男性とぶつかった付近を探し続ける。
華が探し始めてから数十分後、僕と莉紗が、お腹を満たして寿司屋を出る。
二人はアパートに帰る途中、路上で何かを探している高原華を見かける。
僕は、思わず華に話かける。
「何か、落とされたのですか?」
困惑した表情の華。
「実は友人への誕生日プレゼントを落としてしまって、探しているところです」
僕と莉紗は、
「一緒に探しましょう、どの辺で落とされたのですか?」
「このスーパーの駐車場前の道路付近で人にぶつかって、落としてしまいました、ありがとうございます」
華が、弱々しい声で答える。
僕たちが付近をあちこち探していると、道路の電柱の陰に莉紗がピンクのリボンがほどけかけ、ふたが半分ずれて人形の顏が飛び出している紙の箱を見つける。
ふたをあけてみると、中には、全長約30㎝で七色の虹柄のピエロ服を着て、ピンク色の髪に黄色の丸い突起を先端につけた七色のピエロ帽子を被り、まん丸おめめに丸い小さな鼻、薄ピンクのおちょぼ口、ほんのり薄赤い頬をした顔のピエロ人形が入れられていた。
人形は座った姿勢で足を投げ出し背中にゴールドのゼンマイがついている、ゼンマイを回せば何か動作をするだろうと、回してみたが壊れているのだろうか、ピクリとも動かない。
華が今にも泣きだしそうな顔をして、人形を見つめている。
莉紗と目を合わせた僕は、
「ゼンマイをまけば、何か動き出す玩具でしょうから、今から僕の家で修理しましょう、お時間はありますか?」
「実は僕は玩具メーカーに勤めているのです」
嬉しそうに頷く華。
「大丈夫時間はあります、宜しくお願いします!」
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