変わらないドール

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変わらないドール

 私には、大切にしているドールがある。  DOLL、人工知能を組み込んだ人形タイプのアンドロイドだ。  今ではひどく時代遅れなタイプで、私がまだ稚い子供だった頃に祖父母からいただいた物だ。 「マスター、マスター、お花、キレイですね」 「ええ、そうね。アンジェリカ」  アンジェリカと名付けた私のドールは、西洋人形の姿をしている。小さな手、小さな足、柔らかな金の巻き毛とぱっちりした青い瞳。私の自慢の友達だった。  転勤の多い職に就いていた両親の都合で、幼い私は友人をつくりにくい環境にあった。一人っ子で、内気なせいもあっただろう。  常に寂しくしている私を見かねて、祖父母は当時の最新型であったドールを買い与えてくれたのだ。 「マスター、マスター、お水、どうですか」 「ええ、ありがとう。いただくわ、アンジェリカ」  子供の私は、アンジェリカだけが友達だった。  だが、人は変わる。成長してゆく。  いつしか私にとって、彼女は対等な友人ではなくなっていた。
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