どうせなら好きな物を

１．

　バッグの中身を出して、明日必要なものと入れ替える。辞書はロッカーに入れられるけど、教科書は基本的に毎日持ち帰る。
　家での勉強に必要だし、そこまで大きいロッカーじゃないから禁止されている。
　どこの学校でもあることなのは分かっているけど、面倒だ。けど、頭の体操にはなるかもしれない。

　現代社会を出して、古文を入れる。明日の時間割と照らし合わせて間違えないように。
　忘れても借りるか見せて貰えば済むけど、それは何となく恥ずかしい。

　入れ替え終えて、次は明日提出することになっている宿題を片付ける。
　英語。苦手だ。

　英語といえば、ハンカチの隅には英字が書いてあった。筆記体。意味は知らない。気に入ったのはデザインだった。
　薄いピンクの水玉模様に水色の縁。女子高生だからこそ持てるような色。理沙には可愛すぎると言われたけど、別に構わない。

　ハンカチのことが気になり始めて、プリントの内容が頭に入ってこなくなった。
　大袈裟だけど、そんな状況。

　シャーペンを机に置いた。
　コンビニから先、どこで立ち止まったか。振り返ってみる。

　確か何かの店の前、屋根の下だった。
　分かったのはそこまで。私の記憶力はここまで弱かったのかと、残念に思う。

　テストの点は悪くないのに。

　それとこれとは別なんだろう。明日も同じ道を通って行くから、そのときにもう一度頭を捻ってみることにした。

　きょうはもう終わり。
　ご飯の後、宿題の残りを片付けてお風呂に入って寝る。
　これが意外と時間がかかる。
　けど、ゆっくり食べないと太る。綺麗になりたいならお風呂も長いぐらいがいい。三つ上の兄さん（いまは家を出ている）はお風呂を十分で済ませるけど、女子でそれはない。

　将来のため、やるべきことは丁寧に。ただし、その中に勉強は入ってない。皆そんな感じだろう。どうせなら楽しく生きたい。

　お腹が空いた。部屋を出て階段を下りる。きょうはシチューだ。作ってあるものを食べる。一人で。
　中学の最初ぐらいまではそれを寂しいと思っていたけど、もう慣れた。
　学校にいる昼とは真逆の静かな食事。これも悪くない。多分私も少しは成長しているのだろう。

　食べた後は片付けて自分の部屋に戻る。
　少し勉強、と頭では考えていたけど、眠気に負ける。早い。このままいけば、少しだけのつもりで寝転がって、気付いたら朝。ということになる。

　勉強はとにかく、お風呂には入りたい。
　だから動いた。