どうせなら好きな物を

２．

　
　翌朝、少し早く起きるつもりが結局は遅れた。いつもより遅いぐらい。アラームを切ってまた少し眠ってしまった。
　探し物をしながら行くには時間が足りない。でも、きょうぐらいは遅刻してもいいんじゃないかと思う。
　すっきりしないまま授業を受けても意味がない。落としたのがどこの店の前だったのか、景色を見ながら学校に向かうことにした。

　歯を磨いて、髪を整える。着替えて、朝食のサンドイッチ（買った物）を食べて、そうして家を出た。

　商店街に入る手前で自転車の速度を落とした。この通りのどこか、ということだけは分かっている。

　店を見ながら、前に進む。
　本屋、ピザ屋、写真屋。どれも違う。
　確かガラス戸の前だった。

　ガラス戸。それがある花屋の前で立ち止まった。
　特に何も落ちてはいない。

　多分ここだけど、ないものはどうしようもない。
　諦めて、学校に向かう。

　いまからスピードを上げれば遅刻はしないだろうけど、急ぐ気にはなれなかった。