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 ちょっと恥ずかしい。動けずにいる間に、店から女の人が出てきて声をかけてきた。 「何かあったの?」  知り合いに対する良い方に近い。私は迷ったまま、返した。 「…昨日、ここにハンカチ落ちてなかったですか?」 「それならありましたよ。昨日店を閉めるときに見つけて、うちで保管してる」 「え?」  あっさりとした答えに戸惑った。 「わざわざ取っておいてくれたんですか?」 「そう。何日かは置いておくつもりで」 「…ありがとうございます」 「買ったばかりだったんじゃない? 綺麗だったから」 「はい。気に入ってたし、ちょっと惜しいなって思ってました」 「やっぱり?」 「…何で分かるんですか?」  疑問をそのまま口に出した。  自信のある一言がちょっと怖かったけど、良い人だというのは分かる。だからもう少し話そうと思った。 「何となくね」  帰ってきた答えは、答えになっていなかった。 「何となく?」 「感覚だから説明できない」 「…なるほど」  何となく分かる。お姉さんは店の中に戻って、また出てきた。 「はい」  ハンカチを渡してきた。 「ありがとうございました」  お礼を言って店から離れた。
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