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真っ暗闇な部屋の中で -①
あれから、何日経ったのだろうか。
いや、まだ数時間、数分かもしれない。
あれから の、あれ とは、
「誘拐されてから」だ。
私は見知らぬ男に誘拐され、今は見知らぬ真っ暗闇な部屋に閉じ込められている。
別に誘拐自体はどうでもいい。けれど、せめて一言言ってくれれば無理矢理やらなくたって、私はついていっていた。
何で誘拐を「どうでもいい」と言うのかって?
それは、…その質問は、これからの私の人生を見てからにして欲しい。
古びた扉がゆっくりと開いた。私は久しぶりに感じた音と光に目を擦りながら、誘拐犯の姿を見る。
「やァ、こんにちは。
俺は…そうだなァ、「ミズ」とでも呼んでよ。宜しくねェ、佐野 鯱 チャン。」
フードを被り、黒マスクに眼鏡を掛けているその人は、穏やかに笑った。
「…あなたは、私を誘拐した人で間違いない?それと、何で名前を知っているの?えっと…ミズおにーさん。」
首を傾げ、「呼んでよ」と言われた名前を口にしては。
「あァ、記憶はあるんだねェ?よかったよかった。記憶無かったら、説明が面倒だからねェ、助かったよ。
名前ぐらい知ってるよ、見知らぬ少女を突然誘拐するような変態じゃあ無いからねェ。」
「でも 知人の少女を突然誘拐するような変態 でしょう?」
「うぐッ、それは否定できないケドねェ…」
「ふふ、面白いね、ミズおにーさん。
それで、私のことを何で知ってるの?というか、この部屋には電気無いのかしら」
私はキョロキョロと部屋を見渡しては
「あァ、その事は後々話すよ。
御免ねェ。俺が外出する前は、すっごく気持ちよさそうに寝てたからさァ、暗い方が寝やすいでしょ?」
そう言うとおにーさんは灯りをつけて。
「なぁんだ、そういうことね。
気遣ってくれてありがと、それで、色々と説明してくれるんだよね??」
「あァ、勿論。
話せる限りのコトは、話すさ。」
。
。
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