水玉模様のハンカチ

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水玉模様のハンカチ

「ない!」 私は少々乱暴に鞄の中を混ぜ返していた。 「何が? そんなに慌てちゃって、財布でも落とした?」 寒い中アイスカフェオレを飲んでいる友人の明美(あけみ)が、呑気な声を出す。 「落としたのはハンカチだよ!」 「ハンカチ?」 ここのカフェに来る前に落としてしまったのだろうか。お気に入りだったのに! 「百均で新しいの買いに行く?」 「そんなぁ……」 「どんなやつ?」 「黄色い水玉」 「あぁ、佐紀(さき)が随分と気に入って使ってたやつだ」 返事をする気力もなくして、ただ黙って頷いた。 テーブルに突っ伏してしまった私の頭を、ポンポンと叩く。 「元気出しなよ」 「お姉ちゃんからもらった、大切なハンカチだったのに……」 「本当にお姉ちゃん大好きだよね、佐紀って」 呆れたような声が返ってくるが、今の私には気にする余裕もない。
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