水玉模様のハンカチ

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「あのぉ……」 「ん? どうかしましたか?」 突然、優しいテノールが聞こえてきた。 アイスカフェオレを飲んでいた明美が返事をする。 気になって顔を上げると、眼鏡をかけた若い男性が立っていた。スーツを着ているから、サラリーマンかな。 「すみません。盗み聞ぎしてたわけではないんですけど、会話が聞こえてきちゃって……」 「あ、煩かったですか?」 「い、いえいえ! そうではなくて。さっき、お手洗いの前でこれを拾ったんです」 そう言って男性が差し出したのは、さっきまで必死に探していた水玉模様のハンカチだった。 「黄色の水玉模様のハンカチ。これじゃないですか?」 「それ! それです! 私の!」 思わず席を立ちあがって単語を叫んでしまう。 「あっ……」 周りの視線が集まり、慌てて頭を下げて席に座る。 「それ、探してたんです。ありがとうございます」 「いえ、大事なものだって聞こえて……。見つかってよかったです」 優しく微笑んだ彼は、私にハンカチを手渡すとすぐに去って行った。 「カッコイイ人だったね」 「見つかってよかったぁ!」 「聞いてないな……」
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