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再会
「でさ! あの先輩ったらすぐ私に仕事を押し付けてくるのよ! そもそもその仕事を引き受けたのは先輩なのに!」
明美の愚痴を聞きながら、昼休憩を終えていつものカフェを出る。
「じゃ、今日は息抜きに、帰りに呑みに行こうよ」
「ほんと? やったぁ! 約束だからね!」
「うんうん。約束。あ、私コンビニ寄っていくから先に戻ってて」
「わかったー」
途中の道で明美と別れると、私は近くのコンビニに入った。
お茶を買うだけと決めていたから、迷わず店の奥まで進んだ。
「あ、すみません!」
「わっ、と。こちらこそ……って、あれ?」
棚を曲がったところで、人とぶつかりそうになってしまった。すぐに相手に謝ると、聞き覚えのあるテノールが返ってきた。
以前、ハンカチを見つけてくれた人だ。あの後もカフェで何度か見かけて、会釈を返すぐらいはしている。
「すみません。俺、ちゃんと前見てなくて」
「い、いえ。私もよく見ていませんでしたから」
長い沈黙に突入して、気まずくなる。
私はとりあえず棚からお茶を出すと、それでは、と頭を下げてレジへ向かった。
「あ、あの」
「え? あ、はい」
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