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夕暮れ時、いつも私は娘の手をしっかりと握る。 娘の梨香がいつ、あの子につれていかれるか分からないから。 夕暮れが闇夜に変わるその瞬間まで、私は愛娘の梨香を離さない。 私の腕が震えているのに気付いている梨香は、何も言わずにキュッと繋ぐ手を握り返してくれる。 私には、誰にも言っていない罪があった。 自分の身可愛さに、あの子を身代わりにして生贄にしてしまった過去。 あの子は二十年前の夕暮れ時に、命を奪われた。 本当は私がそうなる運命だったのを、何も知らないあの子に押し付けて。 あの子は殺されてしまった。 閉鎖的な田舎に家族で越して来てしまったあの子には、もしかしたら必然の死だったのかもしれないけれど。 そんな言い訳をして二十年。決して心は晴れないまま、未だ梨香をつれて行かれる不安を隠せないまま夕暮れを過ごす。梨香があの子の年齢に近付く程に、私のこの漠然とした恐怖は増していった。 あの子は今も、あの場所で来ないはずの私を待っているのだろうか。 私を、恨んでいるのだろうか。 夕暮れが何度過ぎても、その答えは出て来なかった。
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