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梨香は小学生になっても、時折訪れる『ナミちゃん』と遊んでいるようであった。それはいつも夕暮れ時だった。私は梨香を抱きしめると、いつも空に向けて「ナミちゃん許して、お願い…私はいいから、梨香を連れていかないで…」そう何度も何度も許しを乞うた。 夕暮れ時に不安定になって泣き出す母親に、梨香も不安になるのだろう。ぽろぽろ涙を流しながら「ママぁ」と縋りつく。その姿がたまにナミちゃんのように見えて、余計に辛かった。 少しずつ陽が落ちていく。 私は震えながら「ごめんね」と「許して」を繰り返して過ごす。 不意に梨香が耳元で『お姉ちゃん』と言った。私が思わず梨香から身体を離すと、梨香の顔をしたその子は『いつまで待っても来てくれないお姉ちゃんより、梨香ちゃんがいい』と言って笑った。 あぁ、陽が落ちる。 夕日と共に溶けるように消える梨香の身体を、私は必死に掴もうとした。 『梨香ちゃんは、ナミがもらうね?』 ついに夜が訪れ、消えた梨香とナミちゃん。 田舎の一軒家に、私の悲鳴が響いた。 「どうせなら…私も連れて行って…ナミちゃん…」 けれどその日以来、ナミちゃんが訪れる事はなくなってしまった。 私は自分の過去も罪も認めず安寧に過ごした代償を、梨香という宝で支払わされる事となった。 何か一つ、幸せがあるとしたら… もう昼と夜の間を恐れなくても良いんだという事実のみであった。
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