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「確かにどうしてごめんなのかが聞けたら結果がどうであれすっきりはするけど、聞きずらいことこの上ないよね。一応はさ、はっきりと断られてるわけだし」
テーブルの上に何もなければ、頭から突っ伏したい気分だ。
「じゃあさ、りおはこれで村本さんのことあきらめるの? もう終わりにする?」
そう言われて言葉に詰まった。
そんなすぐにあきらめられるほど器用ではないし、正直、終わりにもしたくない。わがままかもしれないけれど、まだ、好きでいたい。もっと彼のことを知りたい。わざわざそれらを言葉にしなくても、きっと結衣子は気付いているだろう。一応は、首を横に振った。
「起死回生。そう言えば、伊勢崎さんにそんなこと言われた。まだ、間に合うかもしれないねって。どこをどう理解したらまだなんて思ったんだろう」
「でも、分からなくもないかも。完全にだめって感じしないもん、なんでか分かんないけど。とにかく、もう一回会ってすっきりさせてこようよ、ね? どうせもう当たって砕けてるんだから」
「結衣ちゃん言い方……」
言葉は悪いけれど、確かに砕け散っている。もうこれ以上、粉々になることもないだろう。
結衣子に言われるがまま、スマホを取り出して村本さんにメッセージを送った。ものすごくシンプルに、「また二人で会えますか?」、たったそれだけの言葉を作るのに、十分以上かかった。
スマホをテーブルの上に置き、気にしないと思いながらも三秒に一度は画面を見つめていた。
時間が経つにつれ、不安でどうしようもなかったけれど、結局、結衣子と別れてからも村本さんからの返事は来なかった。
重い足取りとは言うけれど、かなりの重量感になかなか足が前に進まず、マンションに着いた頃には疲れきっていた。
部屋の電気をつけ、握りしめていたスマホをソファーに投げた。次の瞬間、マナーモードのバイブ音に体ごと振り向いた。スマホを手に取り、恐る恐る画面をタップする。
「いつにしよか?」
村本さんからだった。
一瞬、自分の目を疑った。
普通過ぎると言うか、自然過ぎると言うか。無神経なのか、気遣いからのそれなのか。それでも、返事が返ってきたことにものすごくほっとした。
「来週あたりどうですか?」
「月末忙しいから九月の頭くらいでもいい?」
「もちろんです」
「分かった、また連絡するな」
まるで、フラれた事実がなかったかのようなやり取りに思えた。
村本さんの「おやすみ」に勘違いしそうになり、緩んだ頬を両手で叩く。
当たって砕けて粉々な状況なのだと言い聞かせ、ゆっくりと一呼吸してから「おやすみなさい」と送った。
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