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「あのさあ、村長。村長が今の王様を嫌いなのはわかるよ?でも、夕方のまんまじゃみんな困るのに。王様やみんなに、神様を探してもらわないといけないんじゃないの?」
「たわけ、あのような庶民の気持ちがわからん者共に、この村を荒らされてたまるか」
「……?どういうこと?」
「神様は、この村にいる可能性が高いということさ」
「ええっ!?」
彼は、何も王様が嫌いというだけの理由で、真実を話すことを拒んだわけではなかったのだ。
村長が神様と出会ったというのは、八十年前のこの村でのことであったのである。この村は自然が豊かで空気が澄んでいて、大昔に神様が作った結界が残っていることから、神様にとって非常に居心地の良い土地だというのだ。だから、神様が天上の国から降りてきているとしたら、まずこの土地を訪れるに違いないと村長は考えていたのである。もし国王軍が大挙して押し寄せてきたら、軍人達にこの村を占拠されてしまうかもしれない。村人達は追い出されるかもしれないし、神様が驚いて逃げてしまう可能性の方が高いと踏んでいたのである。
なるほど、それならばあの頭がからっぽな王様に全てを話したら最後、神様に逃げられて全て水の泡にしてしまいかねなかったことだろう。
「神様はこの世界を統べる偉大な力をお持ちだが……神様も、ひとつの生き物なのだ。完全な不老不死ではない。人間よりもずっとゆっくりゆっくり年を取るというだけのこと。だから、八十年前と今で、神様の姿はきっとさほど変わっていないことだろう。……神様は、お前と同じくらいの年の子供だったのだ、ディーデリヒ」
そして、国王や多くの人が知らない事実。
なんとこの世界を統べる神様は、四人いるというのである。
「朝の神様、昼の神様、夕の神様、夜の神様。四人がそれぞれの時間をバランスよく保つことで、この世界は回っている。……この世界が夕方で固定されてしまったということは、夕方の時間を担当する神様か、夜の時間を担当する神様に問題が起きたということだろう。神様は時間が来ると、それぞれが持っているバトンを次の神様に引き継ぐことで朝から昼へ、昼から夕へと世界を切り替えておるのだ」
「へえ……知らなかった。村長、なんでそんなことまで知っているんだ?」
「そりゃあ勿論だとも。なんといっても、儂は神様の友達だったのだからなあ!」
はっはっは、と村長は年を感じさせぬ豪快さで笑った。この話をしてくれたということは、村長はきっと自分のような子供に神様を探して欲しいということなのだろう。恐らくは、この村のどこかにいるはずの神様を。残念ながら村長は頭は元気だけれど、足は随分弱ってしまって馬車がなければ移動が難しい。森の中や山の中を探せる体力は残っていまい。
「よし、村長!俺達が、神様を探してやるよ!そして、この世界の朝と昼と夜を取り戻して見せる!」
世界的な危機であることはわかっている。しかし、ディーデリヒは心のどこかでわくわくした気持ちを抱いていた。退屈な日常に降って湧いた、小さな小さな冒険。
神様に会ってみたい。
自分も村長のように、友達になることができるだろうか。
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