オレンジ・バトンを繋ぐ時

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 夜の神様が、この村にいることはわかっている。そして、いつも大体どのへんにいるのかも見当がついているという。  問題は。神様四人の中で、夜の神様の足が一番早いということ。見つけてもすぐ逃げられてしまうのだそうだ。  そして何故夜の神様が逃げてしまったのかわからなければ、どうにかバトンを夜に回すことができても、今度は朝が来ない事態になりかねないということらしい。つまり、事情を夜の神様に聴いて、今まで通り世界をまわしてもらえるように説得しないといけないというのだ。 「ナフトも僕たちも、この森の奥にはまず行かない。村から離れるほど清浄な空気じゃなくなるし、昔いた魔物の瘴気が森の奥には残っていて気分が悪くなるんだ。今は山を超えたもっと奥の森に行ったみたいだけど、昔はこの近辺まで暴れまわってた奴らがいたみたいでね。逆に行きたがるとしたら、清浄な気が一番強いところ。それも、本来なら夜になっている時間帯が、あいつがもっとも活発に動ける時間なんだ」  どのへんだと思う?と尋ねてくるアベント。少し考えてから、ディーデリヒは声を上げた。  本来ならば、今の季節は午後六時頃には日没を迎えるそれ以降の時間帯で、この国で一番空気が清浄なところが何処かと言えば――精霊の泉のあたりに他ならないのではないか。 「よし、精霊の泉のあたりで、ナフトを待ち伏せしよう!」  任せてくれよ!とディーデリヒはドンと胸を叩いて言った。 「大丈夫!俺、足の速さには自信があるんだぜ。村の子供で一番速い。誰にも負けたことない。絶対に、君のオレンジ色のバトンを夜の神様に渡してみせるさ!」
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